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貨幣の単位は、ネカである。
宿屋の銀月亭の看板娘のアカリという少女に、エストからのものと思われる紙切れを、見てもらったのだ。
アカリは、快活な印象の少女で、年は俺と同じくらいだろう、三つ編みの髪型が、よく似合っていた。
アカリは、渡された紙切れを一瞥してから、俺を見て、
「これを、そのまま読めばいいのかな?」
と、聞いた。
「ああ。助かるよ」
と、俺は、言った。
「ええと……『親愛なる九重空さんへ。おやつは、300ネカまでです。気を付けて行ってらっしゃい。女神エストより』だって」
「おやつは300円までの遠足の栞か!」
俺は、紙切れの文面に、ツッコんでいた。
「君が所持している300ネカだと、子供のお菓子を、五個ぐらい、買えると思うけどな」
と、アカリが、言った。
「子供のお菓子と言うと、駄菓子のこと?」
アカリは、首肯した。
物価などの物の価値は、わからないし、多少の換算の差異はありそうだが、1ネカは1円ぐらいではないだろうか。
(しばらくは、そう考えたほうが、俺も、色々考えやすそうだ)
と、俺は、思った。