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「……これは」
俺は、剣に視線を落としながら言った。
剣を受け止めた衝撃で、両手が寒さでかじかんだ時のように震えていた。
「そいつは、ぼうずにくれてやる。俺からの餞別だ」
と、武器屋の親父は、深く渋い声で言った。
餞別とは、遠方へ引越し・転任・旅行などをする者に別れのしるしとして贈る金品やはなむけをいう。
「餞別って、俺がどこかに旅立つんですかね?」
冗談まじりでそう言った俺に、武器屋の親父は目をこらして、
「お前さんには、何かでかい目標があるように思う。俺の勘だかな」
と、言った。
俺が手にしている剣は、以下の通りである。
見れくれは、いかつい装飾がこれでもかと施されていて、オラオラ系やB系のテイストも入っている。
聖剣エクスカリパーである。
この武器屋で絶賛販売中の定価10000ネカの聖剣のことである。
あえてもう一度言うと、聖剣エクスカリパーである。
「……」
俺は、黙ったまま剣の切っ先から柄まで眺めた。
今一度くどく言うと、よりにもよって聖剣エクスカリパーである。
そこら辺に丁寧に陳列されている綺麗めな剣のほうが攻撃力がありそうな気がした。
しかし、武器屋の親父のどや顔を見ると、そうは言えなかった。





