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つまり、リリーカルナ商会の将来を見すえての接触である。
理解できない話ではない。
(……でも)
俺は、少しうつむきながら逡巡した。
イフの色々な表情が、頭の中に浮かんでは消えた。
年齢よりも大人びて見える、冷静沈着な顔。
にっこりとした時の笑顔。
まったくの誤解だが、いやらしいと罵られた時の顔。
二日間行動をともにしただけでも、色々なイフを見てきたような気がした。
(商会同士の接触の手段が……結婚……っていうのは……)
と、俺は、心中独り言ちた。
部外者である俺がどうこう言える筋合いではないことは、わかっている。
「……」
そして、煮え切らないもやもやとした感情は、くすぶったままだ。
「どうかしたか、ぼうず?」
思案に明け暮れていた俺に、武器屋の親父が声をかけた。
俺は、はっとして頭を上げた。
「何か気になることでもあるのか?」
と、武器屋の親父が、聞いた。
考えにふけりすぎていたようだ。





