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「リリーカルナ商会は、老舗だと言ったよな?」
俺は、頷いた。
「その老舗の基盤が、危ういという声がある」
一体どういうことだろうか、俺は武器屋の親父の次の言葉を待った。
「リリーカルナ商会の基盤がぐらついているというのは、イフちゃんのじいさんが現会長なんだが、その下がお留守になっているってことだよ。イフちゃんの母親はすでに他界しているし、婿養子で入った父親は冒険者稼業にあけくれて行方知れず。会長が何とか商会をまとめあげてきていたんだが、ここにきて身体をこわしてしまったらしくてな」
「……」
俺は、言葉に詰まった。
色々と衝撃的な事実が、現在進行形で判明していた。
「リリーカルナ商会の会長も、組織の将来を考えて、舵を切ったのかもしれないな」
と、武器屋の親父が言った。
(それで……結婚ってわけか)
と、俺は、心中呟いた。
俺は、昨晩の冒険者ギルドの酒場でのイフとセドリグのやり取りを思い出していた。
『私の祖父が勝手に決めたことです。私は、了承していません』
『そうだね。君のお祖父さまである会長と、うちの会長が、口約束をしただけの状態だ』
『だったら……!』
『だが、力ある人物二人が口約束までしたんだ。この事実の重さは、まだ幼い君にもわかるんじゃないのかな?』
『……っ』
俺は、天井を眺めながら、
(まるで政略結婚だな……)





