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女神様の餞別に気付いたのは、八百屋の親父さんに、礼を言って、分かれてから、少し歩いたところでだった。
見上げると、空は、夕闇に包まれつつあった。
多分、十八時間ぐらいだろう。
街灯や、建物の軒先では、淡い光が、点りはじめていた。
「もう、こんな時間か……」
露天商は、店じまいをはじめているところも、ちらちら見受けられた。
俺の脳内で、閉店間際のノスタルジックなメロディーが、流れていた。
学生服の内ポケットに、綺麗な小さな布袋が入っていて、中には、硬貨三枚と、小さな紙切れが、入っていた。
紙切れには、可愛らしい丸い文字が記されていて、これは、比較的短文である。
短文に添えるように、イラストがあって、ディフォルメされたエストの微笑んだ顔が、描かれている。
微笑んでいるエストの絵は、グッジョブと言わんばかりの、サムズアップを、している。
書かれている内容は、さっぱりわからないが、状況から察するに、この硬貨を、使っても構わないのではないだろうか。
それに、硬貨三枚の価値は、これから、確認すればいい。
(サンキュー、女神様)
捨てる神あれば、拾う神ありだ。
実は、捨てた神も、拾ってくれた神も、同一の人物のような気もするが、それについては、この際、無視しよう。
俺は、女神様の慈悲心に、感謝しつつ、宿屋に、向かうことにした。
(鬼畜女神様だと思ったけれども、意外と、いいところもあるじゃないか)
と、俺は、思った。
しかし、この俺の評価は、この後すぐに、脆くも崩れ去ることになるのである。





