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「しかも、その赤、絵の具っ? 思いきりまぎらわしいわっ」
と、俺は、言った。
今の俺の周りには、漫画で言えば、俺を中心として集中線が描かれている勢いである。
武器屋の親父は、悩み込むようなしぐさをしながら、
「圧倒的に売れるように、セレブ向けにペイントしたんだが……」
と、言った。
「そのセンスが圧倒的っ……!」
俺が叫んでいるのを見て、武器屋の親父も、そうかと言った。
武器屋の親父は、またもや悩み込むようなしぐさをしながら、加えて自画自賛の調子も交えながら、
「センスありすぎるのも困ったものだな」
「……いや、そうは言ってませんよ?」
この勢いのあるポジティブシンキングは、見習いたいところだ。
まあとにかくだと、武器屋の親父は、腕を組んだ。
「リリーカルナ商会からしてみれば、まっとうでないやりかたも容赦なくとるノーハン商会は気に入らないだろうし、ノーハン商会からしてみれば、リリーカルナ商会は拡大を阻む邪魔者という認識だろう」
武器屋の親父の言に同意するように、俺も頷いた。
ヴィセントのリリーカルナ商会とトライデントのノーハン商会は、商売敵という関係なのだろう。
「水面下での両方の商会の反目が続いていたわけだが……」
と、武器屋の親父は、俺の目を見て、
「それが、ここにきて、長らく犬猿の仲だったリリーカルナ商会とノーハン商会が、手打ち……盃を交わすという噂がある」
と、続けた。





