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俺は、身震いしていた。
今一度、どんよりとした危なっかしいオーラを放っている釘バットもどきを、凝視した。
「……」
必然俺は、無言になった。
あれだろうか、あんなものを使ったのだろうか、あれでクリティカルヒットを喰らった日にはもう立ち上がれないのではないか、いやそもそも次の日もないのではないだろうか。
察するところ、かなり武闘派な話し合いが行われたことは、間違いなさそうである。
俺の視線が泳いでいるのが、気になったのか、武器屋の親父は、俺の視線の先を捉えた。
はたして、そこには、件の釘バットもどきが置かれていた。
(ぎゃあああ!)
心中騒いでいる俺をよそに、武器屋の親父は、懐かしそうに、
「そう。さっき言ったこん棒は、これだよ。こいつを使って、話し合いをしたんだ」
暗がりに置かれていたので気づかなかったのだが、目の前で武器屋の親父が手にした釘バットもどきは、うっすらとどす黒い赤色がこびりついていた。
(ぎゃあああああああっ!)
内心叫ぶことは、避けられない事態だった。
俺の必死の形相に勘違いをした武器屋の親父は、にやっとして、
「何だ、こいつが欲しいのか? 残念だったな、こいつはセレブ御用達だ。5000000ネカ出せるなら、話は別だが」
「どういう価格設定ですかっ? そもそもセレブがそれ欲しがりますっ?」
と、俺は、大きめの声で聞いていた。
俺のツッコミなど意にも介さない調子の武器屋の親父は、朝食でパンを一切れ食べ忘れたのを思い出したくらい気楽な声で、
「あ。赤の絵の具が付きっぱなしだな……」





