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「当たり前のことを言っただけです」
俺は、そう言った。
武器屋の親父は、にやりと笑ながら自身の手の中のゴンリの残りを頬張って、
「そんなノーハン商会が目の敵にしているのが、このヴィセントの街のリリーカルナ商会だ」
と、言った。
(イフ・リリーカルナ……)
俺は、心中イフのフルネームを唱えていた。
「リリーカルナ商会は、ヴィセントを拠点にしている、武器を大々的に扱っている商業組織だ」
と、武器屋の親父は、言った。
「ノーハン商会とは違って、百年ほど前から続いている老舗だ。ノーハン商会との決定的な違いは、リリーカルナ商会がノーハン商会のやつらのようなやり口を嫌っているところだな。義理と人情と商売とをうまくバランスをとってやっている感じだ」
「……」
俺は、武器屋の親父の話を聞きながら木製のイスに座り直した。
「ノーハン商会は、リリーカルナ商会のシマであるこのヴィセントの街まで進出しようという腹だから、両者は必然激突するわな。まあ、リリーカルナ商会の結束が強すぎて、ノーハン商会も、あまり表立って手は出しにくのかもしれない」
ここまで話を聞いてくると、一昨日の当たり屋のチンピラたちの言動も、あやしく思えてきた。
リリーカルナ商会に関係のあるイフに突っかかっていったのは、偶然だったのだろうか。
(……雲行きがあやしくなってきたな)
と、俺は、思った。
俺の中で、疑惑の渦がぐるぐるとうずまきはじめていた。
「もっとも、組織の規模で言ったら、取り込みや排除を繰り返して大きくなってきたノーハン商会が、老舗の組織のリリーカルナ商会に追い付きそうか追い付いたか……このままいけば、ノーハン商会のほうがでかくなっていくだろう」





