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「俺の話代ということでかまわないだろう?」
と、武器屋の親父は、ゴンリを食べながら渋い声で聞いた。
「……わかりました」
俺は、肩をすくめて了承した。
「ノーハン商会は、表向きはきちんとした商業組織だが裏の顔があるっていうのは公然の事実、というところか」
と、武器屋の親父は、天井を見上げながら言った。
「裏の顔……」
「一言で言ってしまえば、ヤクザな商売人ってやつだ」
と、武器屋の親父は、言った。
「だが、政治や経済の世界に色々とパイプを持っているし、商業流通で貢献しているのも事実だから、役人どもも見て見ぬふりだ」
武器屋の親父は、嘆息した。
「まあ、この言葉は好きじゃないんだが、必要悪……という感じなのかもな」
必要悪とは、よくないことではあるが組織や社会などにとってやむをえず必要とされることだ。
道徳的もしくは法律的には悪いことであるし社会的にマイナスの効果があるが、それがなかった場合により大きなマイナスがある時に、その存在を肯定される悪のことである。
「必要悪も、悪には変わりないでしょう」
と、俺は、思ったことを口にしていた。
青くさい考え方だというのは、わかっている。
しかし、間違っていることを間違っていると言えないことは、俺は嫌だった。
武器屋の親父は、ひゅうと口笛を吹いた。
「若造の青っちょろい口のききかただが、嫌いじゃない」





