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実は、先ほどからずっと気になっていたことがあったのだ。
大げさな言いかたをするならば、不測の事態である。
「ああ……ひどい話だよ」
と、武器屋の親父は、神妙な面持ちで言った。
「……て言うか、あんたもたいがいひどいと思いますよ」
「何の話だ?」
「俺の持っていた紙袋の中、勝手に開けていましたよね?」
「まあな……」
しゃくりという音である。
「俺が道中の腹ごなし用に買ってきたゴンリを、食べていますよね?」
武器屋の親父は、俺が先ほど買ってきた果物であるゴンリを、さも当然のように頬張っていたのである。
「そうだな……しゃくり」
「しゃくりとか擬音をわざわざ言う段階まできてるよ、この人!」
「俺の話を聞きにきたんだろう……しゃく」
「……ええ、まあ」
「あの露店のやつだろう? 爽やかな酸味と甘みが口の中で広がっている……しゃく」
「食レポを聞かせてくれとは言っていませんよっ?」
「堅いことはいうな……しゃくしゃくり」
「もう食べる音しゃべらなくていいよ!」





