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「ある日、ある男がやってきて、こう言うわけだ。『ノーハン商会さんの品も扱われたらどうですか?』とな」
武器屋の親父は、右手の手の平を俺のほうに見せながら、話した。
「すると、雑貨屋の主人は、こう答えた。『うちは前からお付き合いしているところがあるので』とな。次の日、事件が起こった」
しゃくりと静かな音が響くなか、武器屋の親父の話は続けられた。
「次の日、雑貨屋は、謎の暴漢の襲撃にあった。毎日きちんと掃除をしていた窓ガラスは割られるわ、綺麗に陳列されていた商品は壊されるわ、主人は殴られるわ、とにかくめちゃくちゃにされた。そんなことが、三度か四度も連続して起こった」
武器屋の親父は淡々とした調子で話し続けていたが、静かな怒りの感情がその中に込められているように、俺には思えた。
「暴漢……チンピラってことですか?」
と、俺は、聞いた。
「そう言ってもかまわないだろうな。お前さんが一昨日やり合ったような組織の下っぱ構成員とか、間接的に商会と繋がっているやつらとか、そういうのだな」
「……まるで潰し屋だな」
俺の呟きに、武器屋の親父は頷いた。
「そんなことがあってから、雑貨屋の主人は、男に勧められたノーハン商会の品を扱うようになった」
と、武器屋の親父は、話をしめた。
おおよそのところはわかった。
ノーハン商会の裏の顔というわけだろう。
ならず者とかチンピラをうまく使って、合法と非合法のすれすれのラインで、販路を拡大してきたのかもしれない。
「ひどい……ですね」
しゃくりという音が、店内に重く響いた。
「……あのですね?」
俺は、武器屋の親父に問いかけていた。





