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武器屋の親父の説明で、ノーハン商会の組織の概要がわかってきた。
「……すごいんですね」
俺は、素直な感想を口にしていた。
セドリグの嫌味な顔が頭の中でよぎったが、ノーハン商会が急成長した大きな組織であるという理解とは別物にしなければならない。
ここまでの話だと、社歴をなぞっただけの話だ。
昨日の晩、アカリや銀月亭の主人が言うのを遠慮していた理由にはならないだろう。
おそらくこの先の話になるはずである。
(ここからだ)
この先の話に、なにかあるはずなのだ。
俺は、緊張して居ずまいを正した。
そんな俺の耳に、かさりという音としゃくりという音がゆっくりと響いた。
「……」
俺は、黙って武器屋の親父の顔を見た。
「そこは、俺もたいしたものだと思っている。だがな、大きくなった理由が、他にもある。そういうふうにのし上がった背景には、それなりに強引なやりかたもあるっていうことだ。黒い噂もてんこ盛りなんだよ」
武器屋の親父は、堅い表情で言った。
「まあ、こいつは、俺も人伝に聞いた話なんだがな」
武器屋の親父はずいっと身を乗り出して、しゃくりという音をさせながら言った。
「そうだな……しごくまっとう真面目な雑貨屋の主人がいたとしよう」
「はい」
俺が頷いている前で、再びしゃくりという音がした。





