4-15
「ノーハン商会は、トライデントを拠点にしている、武器を大々的に扱っている商業組織だ」
と、武器屋の親父は、話しはじめた。
「あらかじめ先に断っておくがな。俺は、ノーハン商会のことは、気に入らない」
と、武器屋の親父は、言った。
はっきりとものを言う親父である。
「俺が言っていることには、個人的な感情とか憶測も入っているかもしれないが、それでもかまわないだろう?」
武器屋の親父は、それが当然だとでもいうように、俺に聞いた。
それは、まるで俺を試しているかのようだった。
「わかりました」
俺は、そう返した。
人と人との話だ、感情を抜きにして成立させることなどできるはずもない。
偉そうに言ってみたが、ネタバレすると、以前学校の体育館で講演があってどこかの偉い人がしていたスピーチでそんなことを言っていたのを思い出しただけである。
武器屋の親父は、にやっとして、
「いい目といい返事だ、悪くない。後は、お前さんが勝手に、俺の話に足し算引き算をして、お前さん自身が判断すればいい」
と、言った。
「ノーハン商会は、ここ二十年ぐらいで勢力を急拡大した組織だ。でかくなりはじめたのは、王都ヨルムレイの防衛戦の前後あたりか」
(……さっきの戦争の話か)
と、俺は、思った。
「言わずもがな、防衛戦……戦争ともなれば、武器や防具は売れまくるよな。ノーハン商会は、その波にうまく乗ったわけだ」
そう言いながら、武器屋の親父は、椅子に腰かけ直した。





