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「即答……だと……」
武器屋の親父は、呻いた。
武器屋の店先で、お買い得品の体で売られている聖剣で、そんな幻の秘技が放つことができるのだろうか。
にわかには考えがたい。
「いいのか? スライムの群れなら、僅かな刃こぼれのみで済ませられる秘技だぞ」
「間に合っています」
「その秘技は、スライムをスラっとスライスするごとき、その名も“殲滅の鼓動”……!」
韻を踏むように滑らかな口上と中二ライクな技名である。
「間に合っています」
と、俺が、言った。
「今なら、特別サービスで、幻の秘技のマニュアルまで付いてくるぞ」
もはや、ノリが実演販売のノリになってきているように思えた。
「さらに今なら、庭のお手入れにも使えるよう、もう一振りエクスカリパーをおまけだ」
「間に合ってます」
伝説の聖剣の用途レベルが、一気に下がったようである。
「わかった。台所でも使えるよう、さらにもう一振りエクス……」
「結構です」
俺は、武器屋の親父の言を即時にキャンセル、略して即キャン、した。
「……つまらないやつだな」
武器屋の親父は、嘆息した。





