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冗談だと、武器屋の親父は、笑った。
「ただのひょろいボウズかと思ったが、どうしてなかなか。強えじゃねえか、ぼうず」
と、武器屋の親父が、言った。
「いえ。そんな……」
「謙遜しなさんな。俺も、昔は傭兵で飯を食っていた時期もあるんでな。わかっちまうんだよ」
「へえ。傭兵でしたか」
「まあ、な」
武器屋の親父は、一呼吸おいてから、真剣な表情になった。
(……え?)
今さらっと重要そうなワードを口にした武器屋の親父である。
(今、傭兵って言ったぞ、この人……)
と、俺は、思った。
好きな男子がいて友人の女子に相談したら「ごめーん。〇〇君とは前から付き合ってたんだ」とさらっと不意打ちを喰らうシチュエーションみたいなものだ。
いや、武器屋の親父と告白する前に撃沈した女の子を、似ている似ていないの引き合いに出すのはいかがなものかとも思えるが、とにかく、俺が不意打ちを喰らったのは事実である。
なるほど、武器屋の親父が放つ、やけに威風堂々(いふうどうどう)とした重厚な雰囲気も、納得できる気がした。
「二十年前の王都ヨルムレイの防衛戦を思い出すな……」
と、武器屋の親父は、遠い目をして言った。
「戦いがあったんですか……?」
と、俺は、緊張して、聞いた。
「まあ。俺の話は、どうでもいい」





