4-6
エクスカリパーである。
ロールプレイングゲームいわゆるPRGやライトノベルいわゆるラノベに少しでも触れたことがあるならば、低くない確率で、いやほぼ知っているであろうほぼ見聞きしたことがあるであろう、かの伝説の聖剣、ではない。
ゲーム終盤でやっとのことで手に入れられる、圧倒的な攻撃力を誇る、あの聖剣ではない。
聖剣と対になっている、一切の攻撃を無効化する鞘がある、あの聖剣でもない。
あくまで、エクスカリパーなのだ。
ありていに言ってしまえば、「バ」を「パ」に変えただけの、何とも危ういすれすれのネーミングだ。
エクスカリパーとは、この武器屋で絶賛販売中の定価10000ネカの聖剣のことである。
剣の見れくれは、いかつい装飾がこれでもかと施されていて、オラオラ系やB系のテイストも入っている。
イキっている聖剣で強敵に立ち向かうのは、俺としてはごめんである。
(いや、そもそも立ち向かえないだろうな)
俺は、冷静に自分自身にツッコんでいた。
そして、定価10000ネカという値段である。
俺のいた世界の1円がだいたいこの異世界の1ネカに相当するということは、わかっている。
10000ネカはおおよそ10000円という計算である。
ざっくり言うと、定価10000円の聖剣というわけだ。
ちなみに、ポイントカードでポイントを30個集めていれば、神々の黄昏ラグナロクのパチものであるラクナロックと両方セットで500ネカだったはずである。
そして、エクスカリパーを運べなかったのが、俺が不採用になった理由だった。
店の入り口までエクスカリパー十本を運ぶように頼まれたのだが、想像以上の重さでびくともしなかったし、まずいことに、中途半端に担ぎ上げた聖剣の一振りを、派手に落としてしまったのである。
「掴むことができなかった、ねえ……」
武器屋の親父は、凄んだ声で俺に話しかけていた。





