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俺の能力である"入力実装"の使い方は、少しずつだが俺自身の身体になじんでいているような気がした。
このあたりは、まったくの感覚だ。
理屈ではないのである。
ジュースが大好きでコーヒーが苦くて嫌いだったのに、ある時ブラックコーヒーを平気で飲めるようになるような、そんな曖昧模糊とした感覚だ。
"入力実装"は、格闘ゲームのコマンドに近い性質をもつ、コマンドをなぞって力を振るうという能力である。
力を発動する時には、すべての視界が、ナイトビジョンによる無色彩の映像のように変容する。
その際の緑のモノクロームの視界は、格闘ゲーム、いわゆる格ゲーでの超必殺技を使った際の演出である画面の暗転に似ている。
そして、閃光が奔って、格ゲーの超必殺技でよく使われるコマンドが閃く。
コンパネのアーケードステックをさばくように、浮かんだ文字列に導かれるように脳内でそのコマンドをなぞると、そのコマンドに対応した技が発動する。
以上が、"入力実装"の仕様である。
(少し、整理をしておこう)
と、俺は、思った。
格闘ゲームで勝利するための重要な要素の一つは、技の種類とその性質を熟知することだ。
格ゲーマーを名乗る以上、避けては通れない学習分野である。
そもそも、通常技と必殺技と超必殺技、いくつの技を持っているのか。
それぞれの技は、どのような性質を持っているのか。
その性質は、どのような局面で有効に働くのか。
有効に働くというメリットと対になっているデメリットはあるのか、あるとすればそれはどんなものなのか。
色々言ってみたが、ようは、格闘ゲームふうに考えれば、俺自身の技表と技の詳細を頭に叩き込んでおくということだ。
ノーハン商会のチンピラたちとの騒動と、クエストで遭遇したスライムの群れとの戦闘とで使った、俺のコマンドを整理してみることにした。





