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三十分ほど街を歩いてみたが、結局、街の案内所を探し当てることはできなかった。
俺は、方針を変更してみることにした。
(とりあえず、誰かに話しかけてみよう)
と、俺は、思った。
今、思い返してみれば、エストとは会話が成立していた。
ならば、この街の人々との会話も支障ない可能性が高いが、同じように言葉が通じるという保証もない。
(……ままよ!)
俺は、露天商の八百屋に、声をかけてみた。
瑞々(みずみず)しい野菜が所狭しと陳列されている、八百屋の主は、五十代と思われる、気のよさそうな親父さんである。
「こんにちは」
と、俺は、挨拶した。
「おう、こんにちは」
と、八百屋の親父さんが、言った。
「いい天気ですね」
会話のとっかかりとして、天候の話は、鉄板である。
「まあ、そうだな。雨になると、お客さんの足も鈍っちまうから、俺みたいな商売をやっていると、晴れているほうがありがたいよ」
屈託なく、からっと笑った親父さんは、好人物のようだ。
俺は、言葉が通じることに安堵しながら、
「この街には、はじめて来たんです」
「観光かい?」





