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月が綺麗である。
夜の静けさは、俺の思考回路を冷却して、俺を冷静にせしめた。
柔らかい月の明かりが、部屋に射し込んでいた。
麻雀の筒子めいた牌を手慰みにいじりながら、俺は、
(さて……)
三日目が、終わろうとしている。
(後、九十七日間か……)
と、俺は、思った。
また、一日が、終わったのだ。
女神エストの言葉通りならば、このままだと、この異世界の有期契約住人である俺は、消える。
有期契約期間は、百日間だから、残りは九十七日である。
(残された期間は、九十七日)
存在契約が切れる九十七日後には、この世界における俺という存在が終わりになり、俺は消滅する。
それを回避するためにあるのが、現在の有期契約から正規契約への昇進だ。
昇進条件はただ一つで、魔王ディストピアを倒すことである。
「なるほどな……」
俺は、独り言ちながら、ごろんと寝床に横になった。
「やれることをやっていくしかないよな……」
だいぶこの異世界にも慣れてきたのだろうか、今までのような寂寥感はずいぶんと薄れているのが、自分でも不思議である。
順応性というやつだろうか。





