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俺たちのパーティーの基本戦略は、日進月歩作戦だ。
作戦名を、“オペレーション・デイ・ゴウズ・ムーン・ウォーク”にしようとイフに持ちかけたら、「何ですか、その痛々しい名前は」と寒々しい表情でイフに即却下されたことは、ここだけの秘密にしておきたい。
しばらくは無理をせず、危険度の低いクエストをこなして、連携などのパーティーとしての練度を上げていくというのが、俺とイフが話し合った結果の当面の方針である。
討伐クエストにも、ギルドの掲示板で一応目を通したが、ハイリスク・ハイリターンのものも少なくない。
そうかと言って、ローリスクの討伐クエストは、他のかけ出しの冒険者たちに人気で、あまり残っていなかった。
細々(こまごま)としたクエストでも報酬は高くはないがきっちり出るわけだから、少しずつ貯めて、貯まったら、装備やアイテムなどを増強していけばいい。
低報酬かつ低危険度の調達クエストは、そんな俺たちの方針と相性がいいのである。
無理をしないというのが、俺たちのパーティーのスタンスだ。
無理は、長続きしない。
気合で瞬発力がかかるのは、定期テストの前か受験の直前期ぐらいだろう。
明日のクエストは、もう決めてある。
デエカの実の調達クエストである。
場所は、ヴィセントの街から五ロキルトーメ、すなわち五キロメートルほど離れた、ネムリアの森というところだ。
「あんまり無理はしないようにね」
と、アカリが、言った。
俺は、サムズアップをして、
「了解」
と、言った。
風呂に入ってさっぱりした後で、俺は、アカリが作ってくれた夕食をいただいた。
夕食は、肉じゃがのような肉ガヤジという名の煮込み料理だった。





