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銀月亭の主人が、口を開いた。
「ノーハン商会のことならば、武器屋の親父が詳しいと思うぞ」
アカリは、そっかと頷きながら、
「ソラ君。武器屋のおじさんなら、詳しいかもしれない」
と、言った。
「武器屋か……」
と、俺は、呟いた。
アカリは、こくんと頷いた。
俺が昨日TASとタメを張れるほどの光の速さでクビになった、あの武器屋のことを言っているのだろう。
TASとは、ツールアシステッドスピードランの略称である、エミュレータ上のゲームの操作で行うことによるタイムアタックである。
TASと一口に言っても、最速プレイが王道なものの、魅せプレイやバグを前面に押し出したプレイなど、色々な種類がある。
俺の場合は、昨日「これが一番早いと思います」的な感じで、武器屋を馘首すなわちクビになったのである。
伝説級の最速の不採用通知をもらったところにこれほどすぐにもう一度足を運ぶになろうとは、予想だにしなかった。
「あ……もしかして、ちょっと行きにくい?」
と、アカリが、心配そうに俺のことを見た。
「ぜんぜん」
俺は、即座に言った。
武器屋に行くことに、抵抗感はない。
俺は、俺のいた世界では一度死んでいる身である。
ふわふわとした妙な達観のような空気を、俺は感じていた。





