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俺は、こほんと咳ばらいをした。
「後で、部屋に夕食を運んでもらえるか?」
と、俺は、言った。
アカリは、不意をつかれたような表情で、
「え……?」
俺の頼みは、アカリにとって意外だったようだ。
「ギルドで食事はとったけれど、食べたりなかったみたいでな」
俺の言ったことは、事実である。
セドリグの一件があったものだから、あまり落ち着いて食べることができなかった、腹五分目という状態なのだ。
腹が減っては何とやら、である。
明日に備えていただいておこうと、俺は考えた。
「……う、うん!」
アカリの表情が、ぱああっと華やいだ。
「後で持っていくね!」
と、アカリは、テンション高めに言った。
銀月亭の主人は、やれやれと肩をすくめていたが、嬉しそうだった。
(アカリにも聞いておくか)
と、俺は、思って、
「アカリ。ノーハン商会って、知っているか?」
と、聞いた。





