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こちらを控えめに見るアカリに向かって、俺は、
「風呂に入ってくるよ」
銀月亭には、露天風呂がある。
そこで、じっくりと浸かって、疲れを癒やしたいところだ。
「今は、入浴して大丈夫な時間帯だろう?」
と、俺は、聞いた。
「……うん」
アカリは、小さく頷いた。
「それと、お願いごとがあるんだ」
と、俺は、言った。
「……お風呂でソラ君の背中流しとかはしないよ」
アカリは、上目遣いに言った。
「頼まんわっ!」
「だって、『情熱と微熱の狭間で』の中盤のシーンで……」
「もう、その小説からは離れて!」
「……私にここまで言わせておいて、拒絶するんだ……」
「いや。べつにそこまで深刻になれられても……」
「今のは、そのシーンで、お風呂に入ろうとした旦那さんに言ったヒロインの台詞だね」
「まぎらわしいわ! だからもう、その小説からは離れてもらえるかな!」
俺は、声をあげていた。





