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アカリは、俺のほうを向いて、
「何でもないっ」
と、快活に言った。
アカリの表情は、すっかり晴れていた。
曇りのち快晴といった塩梅である。
「素直でよろしい!」
と、アカリの朗らかな声が、響いた。
アカリは、納得したのか、にこにことほほ笑んでいた。
裸エプロンのくだりからは、どうやら無事に脱することができたようである。
ここまでの俺とアカリのやり取りを聞いていた、アカリの父親、宿屋の銀月亭の主人は、笑っていた。
「がっははははは! 災難だったな、ソラ君」
と、宿屋の主人は、笑いながら言った。
「災難、ですか?」
俺は、言われた意味がわからずに、オウム返しに聞いた。
ああそうだよと大きく頷いた銀月亭の主人は、
「アカリのやつが、ご機嫌斜めになったのはな、それなりに理由があるんだよ。わかってやってくれ」
と、言った。
銀月亭の主人は、意味深に、笑みを浮かべていた。
「理由、ですか?」
と、俺は、またもやオウム返しに聞いた。





