3-107 ※挿絵ありです
「……」「……」
俺は黙ったし、アカリも同様に黙っていたし、時が止まったような錯覚におちいった。
二人とも、無言で見つめ合った。
「……は?」
俺は、文字通り一文字の疑問の言葉を出すのが、精一杯だった。
アカリの表情は、沸騰していた。
「だから! 裸エプローーーーーーーーーーーーーーン……っ!」
麻雀のあがりの時のような歯切れのよさで、アカリは言い放った。
「はあああああああああっ?」
アカリの大声と言葉の内容に驚いて、絶対に安牌と踏んでいたものであがられた時のような心境で、俺も声をあげていた。
裸エプロンとは、一体どういうことだろうか。
「だって、この前、小説で読んだもんっ!」
と、アカリは、言った。
「服とか着ないでエプロンだけつけたお嫁さんが、『おかえりなさい、あなた。ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ……た……し?』って聞くんだよ!」
オーバーアクション気味に、身振り手振りをまじえながら、アカリは続けて言った。
(はああああああああああああああああああああああっ?)
と、俺は、内心おおいに困惑していた。
会話の暴力的なまでの脱線とすれ違いである。
「ソラ君は、その裸エプロンのことを言ってるんだよね……やっぱり、えっちだよ!」
アカリは、一気にまくしたてた。





