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俺は、街に、着いた。
草原の中を、二時間ほど歩いたと思う。
(結構、疲れたな)
疲れたことに変わりはないのだが、不思議なことに、いつもよりも身体は軽かった。
運動は、得意ではない。
走るなどの陸上競技全般と水泳は、得意だったのだが、球技が、まるで駄目で、そして、体育の授業のヒエラルキーは、残念なことに、球技の上手い下手如何に、大いに左右される。
サッカー、野球、バレーなどの団体競技で、引け目を感じてしまうことも、少なくなかったし、ミスの度に、白い視線の応酬があるのが、嫌だった。
歩いている最中に、俺が遭遇したのは、野鳥ぐらいで、人と言えば、街が遠目に見えた辺りで、馬車一台と、すれ違ったのみである。
街には、剣と魔法の世界を彷彿とさせる、レンガ造りの建物が、ひしめいていた。
街は、城郭都市とまではいかないが、立派な壁によって、取り囲まれていた。
壁があるということは、その必要があるということだろう。
外敵を防ぐためのものと考えるのが、普通である。
俺は、逡巡した。
(やはり、モンスター……なのか。それとも、侵略あるいは戦争……)
色々な憶測が、頭の中で駆け巡るが、確認してみないことには、何とも言えない。
俺は、街の中を、歩いてみることにした。
とにかく、まだ何もわかっていない状況で、これを打破するためには、情報収集が、肝要である。
俺は、修学旅行で、海外に行った時のことを、思い出していた。
事前情報やパンフレットに相当するものが、必要だ。
「街の案内所が、あればいいんだけれどもな」