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俺の言葉に対して、アカリが反応するまでに、一瞬の間があった。
「……わっ。言われてみれば、そうだ」
俺に言われて気づいたアカリは、ばっとうつむいた。
「あのな……自分で言っておいてから、照れるなよ」
俺は、肩をすくめて言った。
「だって、言われるまで気づかなかったもん。旦那さんとか、ソラ君、発想がえっちだよ……」
と、アカリは、言った。
俺も、アカリをちょっとからかうつもりで言ったのに、予想外に真面目なトーンすなはちマジトーンになられると、少し困ってしまった。
(余計なことを言ったか……)
と、俺は、思った。
さきほどの酒場での結婚云々(けっこんうんぬん)の話が、頭の片隅によぎったせいかもしれない。
それにしても、えっちとまで言われる発言をした覚えはない。
くわえて、俺とアカリの間で、食い違いというか、理解の齟齬が生じているような気がした。
話がかみ合っていないのではないだろうか。
「一応聞くけど、何で、えっちなんだ?」
と、俺が、聞いた。
アカリの顔がぼっと赤くなった。
「……わ、私に、そこまで言われせる気なんだっ?」
と、アカリが、言った。
アカリの態度が明らかにおかしい。





