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「お疲れさまー」
アカリが、俺を出迎えてくれた。
今晩も、宿屋の銀月亭に泊まることにしたのだ。
チニチニの花の調達クエストで得た報酬があるので、宿泊代は気にする必要がないのは嬉しかった。
「ご飯にする? それとも、お風呂にする?」
アカリが、にこにこしながら俺の顔を覗き込んで聞いた。
「三つに分けて答えよう」
と、俺は、言った。
「三つ? 私は、二つしか聞いていないよ?」
アカリは、きょとんとした顔で聞いた。
「一つ、夕飯は冒険者ギルドでとってきた。二つ、風呂には入るよ」
と、俺が言うと、アカリの顔が曇った。
(あれっ)
と、俺は思ったが、
「三つ、それに第一、そういう質問は旦那さんにするものだろう?」
と、続けた。
食事にするか風呂にするのか、どっちが先でどっちが後かは、議論の余地があるが、別の側面もある。
ドラマなどでもお馴染みなのである。
疲れて仕事から帰ってきたサラリーマンの夫に、玄関先で妻が投げかける台詞だ。
もちろん、この文化がこの異世界にも通じているかは、別問題ではある。





