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俺は、すぐに思い出した。
ノーハンという言葉である。
チンピラたちとの騒動で耳にした言葉だ。
(あのチンピラたちが言っていたのが、トライデントの街のノーハン商会だったな。……こいつと、関係があるのか?)
と、俺は、男性を見ながら考えた。
「何でも昨日うちの若い衆が、君たちに迷惑をかけたようだったから、直接謝りたくてね」
セドリグは、申し訳なさそうに眉をひそめて、
「僕も、このことに関しては責任を感じているし、心を痛めているんだ」
どうにも形だけの謝罪にしか見えなかった。
宿題忘れの常習犯が「さーせんー! 次からはぁ気をつけますー」と言い訳している時ぐらいの、うさんくささである。
「その件はもう済んだことです」
と、イフは、短く言った。
「報告は、受けているよ。何でもバスケットをかかえたイフとぶつかってしまったのが、ことのきっかけのようだね」
と、セドリグは、言った。
チンピラAとB及びCが、セドリグに報告したということだろうか。
そうだとすると、このセドリグという男性は、報告を受ける立場、言いかえれば、チンピラたちの上役というポジションだろう。
加えて、名のったセカンドネームがノーハンというのだから、ノーハン商会の中でもかなり重要なポストの人間なのかもしれない。
「私も前をよく見ていませんでしたから、非は私にもあります。ですが、その後は……」
「そうだね。彼らが、乱暴な物言いで突っかかってきたんだろう? その点については、彼らも反省しているし、僕からもよく言い聞かせてあるから、安心してほしい」
セドリグは、イフをさとすように言った。





