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格ゲーにおける挑発行為は、様々だ。
K.O.(ケーオー)した相手への追撃、通称死体蹴りや、明らかに相手にも分かるくらい手を抜いた舐めたプレイをする、通称舐めプなど、枚挙に暇がない。
もちろん、こうした挑発行為は、相手に対する礼を欠いているしマナーの悪い行為であるから、そもそも控えるべきである。
挑発行為にのせられて熱くなってしまうと、もはや相手の思うツボだ。
相手の術中に、はまっているのだ。
冷静さをかいてしまっているのだから、平常の力が発揮できるはずもなく、あえなく敗北を喫してしまうのだ。
俺自身、格ゲー初心者のころは、一ラウンド目での挑発にあてられて二ラウンド目を落とすことが少なくなかった。
俺のホームだった地元のゲーセンは、ビデオゲームに力を入れている、全国的にも有名な店で、ネットでも神実況で知られる名物店長もいた。
一番有名な実況は、「画面はしぃっ! おしこんでぇっ! まだ入るぅっ!」である。
俺のいた世界の地元のゲームセンターで名をとどろかせていた"煽りプレイのジャン"というプイヤーとは、よくやり合ったものだ。
ジャンは、舐めプの権化で、それを自身のパフォーマンスに取り込んでいる猛者だった。
ヒール役のプロレスラーのような不思議な華があった。
ただ、俺に言わせれば、舐めプは舐めプである。
ジャンの実力は確かだったが、俺は、そういう紳士的でないジャンの舐めプが気に入らなかった。
また、他の筐体が空いているのにわざわざ不毛な対戦を申し込んでくるジャンに、文句を言ったこともあった。
ジャンジャン言ってみたが、ジャンとはじゃんじゃん数多くの対戦をしたことは事実である。
今思い返すと、ジャンとはいいライバルだったのかもしれない。
ちなみに、ジャンとは、麻雀は一度も一緒にやったことはなかった。
最後に、ジャンを連呼してみたが、ジャンの本名は、下川吾郎でどこにもジャン要素はない。
下川にプレイヤーネームの由来を聞いたことがあるが、何となくフィーリングで付けただけと回答されたのを覚えている。





