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「……はあ」
俺は、生返事をした。
煽っていると言っているからには、煽られたら負けである。
(……ふっ)
落ち着いた俺は、内心苦笑していた。
向こうの狙いがわからない以上、まずは無難に様子見だ。
「……」
俺は、ひとまず黙っておくことにした。
沈黙は金なりである。
「ほう? 田舎者は、こんな簡単な誹りに対しても何も言い返せないのかな?」
と、男性は、したり顔で言った。
(勝手に言ってろ)
と、俺は、思った。
格闘ゲームで培った煽り耐性が、こんなところで役立つとは思いもよらなかった。
格闘ゲームは、一人用すなわちCPU戦も楽しいが、その醍醐味は、対人戦にある。
対戦格闘ゲームという名前が示す通り、対戦して何ぼなのだ。
そして、その対人戦では、人対人であるがゆえに求められるスキルが多々存在する。
相手の行動のクセを読む予測力などがその一例だが、心理戦の部分が少なくない。
その中に、煽り耐性がある。
これは、相手の挑発行為にどれだけのせられないで冷静に対処できるかということである。





