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「珍しい服だね。あまり見ない恰好だ」
と、男性が、言った。
俺の学生服のことを言っているのだろう。
当然だ、俺のいた世界の服なのだから、こちらの異世界ではむしろ異端というか風変わりな部類に属するのだろう。
「じつに奇抜だな。ただ、奇抜のみの一点集中という感じのデザインだな。もしかすると、どこかの片田舎の風習の名残なのかな?」
と、男性は、言って肩をすくめて、
「奇抜を通り越して奇妙でさえあるし、僕にはとうてい着こなせなさそうだ」
と、芝居がかった調子で続けた。
(……こいつ)
俺は、心中かちんときていた。
俺のことをディスっているのは、よく伝わってきた。
「どうしたのかな? あまり顔色がよくないようだが」
と、男性は、俺に言った。
心配するようなその台詞には、心配という感情は含まれていないように思えた。
「……いえ。あまり、服のこととかで誉められたりしたことがなかったものでして」
俺は、内心のもやもやを隠しながら、慎重に言葉を選びながら返した。
「すまない」
男性は、両手を胸のあたりまで上げて、苦笑した。
「誉めているんじゃなくて、煽っているんだよ。僕は、田舎者は好きじゃないんだ」
男性は、笑顔で言った。





