3-90
ポケットチーフには、いくつかの挿しかたがあったように、記憶している。
もちろんネットで漁った程度の浅薄な知識だし、この異世界にそのまま当てはまるのかは別の話である。
四角形に畳むスクエア・フォールド、これはスタンダードかつ鉄板のスタイルである、ゆえにビジネスシーンでよく用いられる。
三つの山ができるように畳むスリーピークス、これはフォーマルな雰囲気を出すときにぴったりだ。
膨らみを持たせるパフド、これは華やかさに重点をおいたスタイルである、ゆえにパーティーシーンなどでよく用いられる。
パフドの上下を逆にしたクラッシュド、胸元に花が咲いたようにも見えるスタイルである、パフドと同類系とも言われる。
この辺りが代表的なスタイルである。
(何で俺はこんなこと知っているんだろうな)
と、俺は、思った。
後から思い出したことなのだが、学校の文化祭の演劇で見たサラリーマン役のスーツが妙に大人びて見えたので、突発的に興味がわいて、スーツまわりの知識をネットで漁ったいたからだった。
目の前の男の挿しかたは、パフドだった。
男性は、演劇のパーティーシーンから飛び出してきたように、エレガントというか洒脱な雰囲気を醸し出していた。
ざっくり言ってしまえば、イケメンの部類に入るだろう。
イフの対応からするとどうやら顔なじみのようだが、イフの態度が気になった。
「こんばんは」
いずれにしてもと思って、俺は会釈をした。
「こんばんは。君が、イフのパーティーのメンバーかな?」
と、男性が、聞いた。
「そうです」
と、俺が答えた。





