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3-89

「盛り上がっているねえ」


 不意に、後ろから声がした。


 俺とテーブルを(はさ)んで向かい合っているイフの顔が、こわばった。


 はじめて見るイフの表情である。


(なんだ?)


 と、俺は、思った。


 冬の時期に、締め忘れていた窓ガラスの隙間(すきま)から冷たい風が入り込んできたような、あまり好ましくない感じを受けた。


「……こんばんは」


 と、イフが、声のしたほうへ静かに頭を下げた。


 俺が振り返ると、男性が立っていた。


 年齢は、俺のよりも少し上ぐらいだろうか。


 タイトになでつけているオールバックが、(さま)になっていた。


 スーツのようなかっちりとした服を着ていて、みなりがいいというのが、第一印象だ。


 足元を飾っているのは、きちんと磨き込まれた黒の革靴である。


「やあ、こんばんは。イフ」


 と、男性が、柔らかく言った。


 男性の言葉づかいは、優しく丁寧な調子なのだが、その調子がかえって気になった。


 イフの顔も、(くも)ったままだ。


 男性の胸元を飾っているのは、ポケットチーフだろうか。


 胸ポケットへのそのひと挿しが、男性の(そよお)いをさらに華やかに引き立てているようだ。

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