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「ちょっと、もう一切れもらっただけだろう。こちらの一切れに対して、そちらは二切れ。これじゃ、不平等だぞ」
と、俺も、反論した。
「勝手に取ったことへのペナルティです」
半泣き顔のイフが、きっぱり言った。
「……ぐぬ」
俺は、言葉に詰まった。
女の子の涙は反則だ、何かの古典にもそう記してある、かもしれない。
(……)
俺は、黙って逡巡した。
一言断ってから、イフのグーバンハをもらえばよかったのだ。
確かに、イフの言う通りである、非は俺にあるだろう。
「……ごめんな、イフ。俺が悪かった」
俺は、素直に謝った。
「わかってもらえたのなら、それでいいです」
イフは、柔らかくほほ笑んだ。
「ああ。俺ももう少し……って、ぎゃあああああああああああああああああっ!」
俺は、再び叫んでいた。
それもそのはず、ほほ笑んだイフの口元には、メンチカツめいた揚げ物がさらに一切れ投じられていたからである。
「何でさらっとしれっと、もう一切れ追加しているんだよ!」
予想外、想定外の展開来たれり、といったところだ。





