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「こっちもうまいな」
俺は、唸っていた。
自然と、そんな言葉が口をついて出てきていた。
ハンバーグめいた肉料理とメンチカツめいた揚げ物、どちらも甲乙つけがたい一品だ。
次に来た時に、どちらを頼むか、判断に迷うほどである。
(うむ……)
と、俺は、自身のプレートとイフのプレートとを交互に見た。
「もう少し食べ比べる必要があるな」
と、俺は言って、イフのプレートのハンバーグめいた肉料理にフォークを伸ばして、一口食べた。
「ああああああああああああああああああああああああっ!」
イフが、素っ頓狂な声を上げた。
「一つって言ったじゃないですか! 一つって言いましたよ! ソラっ、許しませんよ」
泣き顔になったイフのフォークが、俺のプレートに伸びてきて、メンチカツめいた揚げ物を二切れ持っていかれた。
「ぎゃああああああああああああああああああああああっ!」
今度は、俺が叫ぶ番だった。
「何やってるんだ! 何やってんの? 二つは、反則だろうっ!」
俺とイフの視線が、交錯した。
「ソラが、勝手に食べるのが悪いんですよ。私にとって、このグーバンハは自分へのご褒美なんです」
メンチカツめいた揚げ物二切れを、小さな口で一生懸命もぐもぐしながら、イフが恨み節で反駁した。
今はそれどころではないが、俺が失敬したハンバーグめいた肉料理は、グーバンハと言うようだ。





