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俺とイフは、ぐいっとグラスを傾けた。
喉に冷たい感覚が通っていき、何とも爽快である。
「うまいな」
と、俺は、自然に声を発していた。
俺は学生だったから、酒の味はわからない。
それでも、居酒屋で仕事終わりのビールを飲んでいるサラリーマンが、テレビのインタビューなどで「最初の一杯がうまいんだよ!」などと言っている気持ちが少しわかったような気分だ。
「はい。おいしいです」
と、イフも、こくこくとジュースに口をつけていた。
「おめでとうさん!」
不意に、後ろから景気のいい声がした。
大きい豪快なジョッキを手にした中年男性である。
「こんばんは」
と、イフが、ぺこりと頭を下げた。
イフの対応からすると、どうやら顔なじみのようだ。
「こんばんは」
俺は、会釈をした。
「お前さんが、イフちゃんと組んでいるってやつかい?」
と、男性が、聞いた。
「そうです」
と、俺が答えた。





