3-78
「……」
俺は、黙っていた。
「もちろん大賢者グローシス様の一番弟子、加えて階級A級の魔法使いラテュレ様が言っていたのですから、それに対してどうこう言いたいのではありません」
俺は、冒険者ギルドで出会った、ラテュレというツインテールの小柄な少女を思い出していた。
自身の師のことをジジイ呼ばわりしている、何とも不遜というか物怖じしない態度は、インパクト大である。
(ぶっちゃけそんなにすごいやつには見えなかったけどな……)
そう思い返している俺こそ不遜なのだろうか、よくわからなかった。
「あの時の……」
ソラは、言葉を区切ってから、
「ソラの魔法"暴風塵斬"は高位魔法です。私も、知識として知っていただけで、あんなすごい高位魔法を実際に目にしたのは、はじめてです」
と、言った。
「俺も、まあ使ったことはなかったな」
と、俺は、歯切れ悪く返した。
当たり前である、何しろ今日はじめて魔法を使ったのだ。
「あれほどの魔法は、おいそれと使えるものではありません。冒険者でも使える者は、ごく一部の者に限られるはずです……」
と、イフは、慎重に言葉を選びながらといった調子で言った。
(かなり高レベルの魔法ってことか……)
と、俺は、思った。
今回の戦闘でわかったのは、"入力実装"の扱える技の範囲は、並みのレベルを超えているということである。
実際には、はじめて訪れたファーストフード店でよくシステムのわからない状況でチーズバーガーセットを頼むぐらいの気安さと緊張感を抱えて、"入力実装"を発動したのだが、それについてはこの際黙っておくことにした。





