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「名残惜しいのですが、そろそろお別れの時間です」
と、エストが、言った。
「ラジオ番組のエンディングのようなノリだな」
「ちなみに、エンディングテーマは、私が歌っています。少ししんみりとした気分になれるバラード調です」
「いや、曲のキョの字も、流れていないよね。しかも、ラジオ番組をやって、エンディングテーマを自分を歌ってるって、どんだけ世俗まみれのまみれの女神なの?」
「エンディングテーマは、セルフカバーしたものです。Bメロ後の展開が、少し変わったのです」
「いや、聞いてないからね。そんな情報は!」
「この番組は、みなさまの暮らしと生活を応援する○○○○の提供で、お送りしました」
「もう無理やりだろう、それ!」
突風が、足元に、巻き起こった。
突如、俺が立っている青空に、畳み三畳ほどの穴が、出現した。
「あなたが私のことを必要とする時に、また、お会いすることになると思います」
青空の中に、黒い穴が、ぽっかりと開いているのだった。
「え……」
俺は、もう落下しはじめていた。
「困らない程度には、あなたの存在の力を、底上げしてあります」
ジェットコースターどころではない、急激な風のうねりが、襲ってきた。
心臓を鷲掴みされたような感覚に、俺は、戦慄した。
「……あなたに、女神エストの加護があらんことを……」
女神様のそんな言葉が、どこまでも墜ちていく俺の耳元に、かすかに響いていた。