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3-73

 すべての視界が、ナイトビジョンによる無色彩の映像のように変容した。 


 緑のモノクロームの視界は、格闘ゲーム、いわゆる格ゲーでの超必殺技を使った際の演出である画面の暗転に似ている。


 そして、閃光が(はし)って、文字列が(ひらめ)いた。


 236236+大K。


 格ゲーの超必殺技でよく使われるコマンドだ。


 レバー入力とボタンを同時押しをすることで当該(とうがい)必殺技が発動するのだが、ある程度格ゲーに慣れ親しんでいる者であれば、コマンドを見れば指先が自然に反応してそのコマンドをなぞることができる、


 電卓やキーボードのブラインドタッチと同じようなものである。


 コンパネのアーケードステックをさばくように、俺は、浮かんだ文字列に導かれるように脳内でそのコマンドをなぞっていた。


 236236+大Kというコマンドは、チンピラとの騒動の時の6+小Kや236+大Kというコマンドよりも、複雑なものである。


 236+大Kと比べても、レバーを余計に90度回転入力する必要があるわけだから、難易度も上がるし手間と時間もかかるし、入力失敗のリスクも上がる。


(こう……か!)


 格闘ゲームでは、フレームという考え方が非常に重要である。


 60フレームは1秒で、秒を60分割するのが標準的仕様だ。


 技のモーションやヒット時やガード時の有利及び不利など、様々な場面で、フレームの概念が重要になってくるが、ここでは割愛(かつあい)したい。


 技のコマンド入力のみに着目する。


 レバーが一定のフレーム内に入力された後にさらに一定のフレーム内にボタンが押されればコマンドとして成立する。


 当然、入力内容が長ければ長いほど複雑であれば複雑であるほど、必要とされるフレーム数は多くなり、それは必然的に技が出るまでの時間に直結する。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 俺は、両手に熱を感じた、力が蓄積されていくような感覚である。


 やはり、コマンドが長いとその分、入力までと技の発動までに時間がかかるのかもしれなかった。

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