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(落ち着くんだ)
俺は、心の中で自分に言い聞かせた。
はじめての実戦だ。
そう考えると、心臓の鼓動もことさらに気になるし、足も重たく感じてきた。
スライムは、当然そんな俺の事情などお構いなしに、二匹が束になって飛びかかってきた。
速さはないが重量感があり、大気が震えた。
「ソラ……っ!」
イフが、叫んだ。
気づけば、俺は、スライムに押しつぶされそうになっていた。
「ええいっ」
イフは、ガラス瓶のコルク栓を取ると、その小柄な体全体を使ってまるでタクトを振るうようにガラス瓶を振った。
ガラス瓶からこぼれだした淡い赤色の液体が、宙に踊ったかと思うと、きらきらと輝いた。
「爆ぜよ……っ!」
イフのかけ声とともに、スローモーションのように輝きが放物線を描いた。
「……"小さな赤"!」
イフが、疑似魔法の名を叫んだ。
次の瞬間には、その輝きの軌道線上に、炎の塊がつくられていた。
「吹き飛べっ!」
振動音を鳴り響き、大気中で小さな爆発が起こった。
小さな爆風が起こって、二匹のスライムが、大きく吹き飛んでいた。





