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「たいして意味のない言葉だよ」
俺は、言いながら肩をすくめた。
軽口でもたたかなければ、俺自身、緊張感でやられてしまいそうだったからである。
「このスライムの群れ……」
俺は、本題に入って自問するように言った。
イフが、俺のほうを見た。
「戦うのかそれとも逃げるのか、どっちがいいんだろうな」
と、俺は、少しかすれた声で言った。
俺は、姿勢を低くして身構えた。
ヴィセントの街でチンピラたちとやり合った時のように、怒号が飛んでくるわけではないが、スライムの群れの無言で無機質なじわりじわりとした接近は、かえって不気味だった。
剣呑な雰囲気に飲み込まれそうになるのを、ぐっと堪えた。
「三十六計逃げるに如かず……逃げるのは、どうだろう?」
と、俺は、イフに率直に聞いてみた。
形勢が不利になった時はあれこれ思案するよりも逃げてしまうのがいちばんよい、不測のことが起こった時には逃げるもありではないだろうか。
スライムたちは、俺たちが話している間にも、ゆっくりとだが確実にこちらに近付いてきていた。
「……」
イフは、俺の問いかけに無言で辺りを見回した。
「すでにまわりを囲まれています」
イフは、冷静に状況を分析しながら言った。
「退路は断たれています」





