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もちろん、最終的にはどちらかを選ぶ必要がある場合の好みの問題で、俺自身シンボルエンカウントでも名作だと思う作品は多々ある。
偉そうにランダムエンカウント推しで述懐してみたが、悲惨な思い出も多々ある。
意図せず適正レベル以上のダンジョンに挑戦してしまった時のことだ。
当たり前だが、ダンジョンの道中は苦戦の連続であった。
MPはあっけなく底をつくし、完全回復の貴重なアイテムを使いまくりながら、そんな強行軍だ。
それでも何とか最深部のセーブポイントまで辿りつきそうだというシチュエーションで、画面が突然点滅してランダムエンカウントして全滅したのは、苦い思い出だ。
それに三歩ほど歩くごとにランダムエンカウントの洗礼を受けるクソゲーには辟易したりもした。
これらの経験は、RPGゲームに触れたことのある諸兄姉ならば、身に覚えがあるのではないだろうか。
まさに悲喜こもごもである。
ただし実際は、ランダムエンカウントは空想上の産物でシンボルカウントが現実である。
一本道を歩いている時に、相手はいきなり何もない空間から飛び出してきたりはしない。
(しかしだ……)
俺は、とまどっていた。
このいきなりスライムの群れに囲まれている状況は、まるでそんな現実の法則を無視して、ランダムエンカウントしている状況だ。
「ソラ」
イフが、緊張した面持ちで俺に呼びかけた。
俺は、じりじりと迫りくるスライムの群れを見すえた。
しかし、今は原因探しに拘泥している場合ではない。
「……ままよ!」
俺は、言いきった。





