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「もしかして、俺は、魔王を倒す使命を負った勇者に転生したとか?」
「まさか」
と、言って、エストは、爽やかに微笑した。
俺は、頭の中を整理しながら、
「俺は、この世界の普通の住人なんだよね?」
と、エストに、聞いた。
「はい」
再び、エストは、爽やかに微笑した。
「じゃあ、やっぱり、俺は、ごく普通の住人なんだよな。一介の住人が、魔王を倒すなんて……」
俺は、言い淀んでいると、エストが、意を得たりという表情で、頷いた。
「愚問ですね」
エストは、瞑目し、間をおいてから、刮目した。
「あなたは、確実な可能性が、担保されていなければ、動けないのですか。堅牢な石橋でなければ、渡ることを、拒むのですか」
エストは、憂いを秘めた瞳で、俺を、見た。
(いや。そんな目で、見られても……)
「99%無理だとわかっていても、たとえ1%しか可能性がなかったとしても、それでも、1%の望みがある限り、諦めない。可能性を、信じる。それこそが、大切なのだと、私は、思います」
「無理やり格好よく言ってくれているけれども、別の言い方をすれば、一般的に言って、無謀というんだと思うんだが、それは……」
「熱くなれよ!」
女神エストは、両手で、ガッツポーズをとった。
何とも萌えるしぐさではあるが、キャラがぶれていると思うし、可愛い声で、言われても、迫力が皆無である。