3-65
「……っ!」
気づけば、俺たちは、スライムの群れに囲まれていた。
実際にスライムを見たのは、これがはじめてだったが、その外見はほぼ予想した通りである。
RPGの世界観通りのゼリー状・粘液状のモンスターのようだ。
スライムたちは俺たちを取り囲んでいて、その円陣を少しずつせばめてきていた。
幸いなことに、動きそのものはゆっくりとしている。
(だが、数が多い……)
と、俺は心中呻いていた。
その数は、ざっと見て三十匹ほどだろうか。
「どうして……! さっきまでそんな気配は全然なかったのに」
と、イフが、狼狽して言った。
確かに、イフの言う通りである。
これだけの数である、何らかの気配や音を事前に感知できなかったのは妙だ。
すこぶる見晴らしのよいこの草原で、これだけのモンスターの群れに気づけなかったのはやはり腑に落ちなかった。
俺は、チニチニの花を集めたバスケットを静かに草の上に置いてから、身構えながら、
(どういうことだ?)
と、思考の歯車を回していた。
俺たちが見落としていただけで、スライムたちは少し向こうに見えるススキのような丈のある植物の茂みに潜んでいたのだろうか。
(いきなりふってわいたみたいだ)
と、俺は、思った。





