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掲示板の前に来ると、所狭しと張り紙があった。
俺たち以外の冒険者たちも、掲示板のクエストをチェックしているようである。
数人で固まって相談しているグループもあった。
俺たちのようなパーティーなのかもしれない。
(さて……)
改めて掲示板に目をやった。
文字を読めないから何とも言えないが、張り紙は随分とバリエーションに富んでいるようである。
それと言うのも、やたらポップ調のものもあれば、やけに事務的で無機質なもの、切実な感情がそれとなく伝わってくるものなど、千差万別だ。
「イフ。俺は、文字が読めないんだ。読んでもらえると助かる」
俺は、正直に言った。
「わかりました」
イフは、頷いた。
「クエストと一口に言っても、色々とあるんだな」
イフは、俺の意を汲んだように、
「雰囲気がそれぞれ違うでしょう?」
と、聞いた。
「俺も、それは感じたよ。個性があるっていうのかな」
学校の掲示板の告知のような公的なフォーマルなニュアンスが伝わってこないのだ、もっと個人的な空気を感じるのである。
「この張り紙は、基本的には、クエストの依頼者が書くものなんです。たまに、ギルドによる修正も入りますが、原則として原案のままなんです」
と、イフは、言った。





