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(……こいつ)
俺がもといた世界で交通事故で死んだこと、この異世界に転生したこと、その際に女神エストに逢っていること、これらについて何か事情を知っているのだろうか。
(こういうやり方は、好きじゃないんだが……)
と、俺は、内心ためらいながら、
「君みたいにすごい魔法使いでも、神様なんて信じるんだな」
と、軽いジャブを放って、ラテュレの表情をうかがった。
ラテュレは、大人びた顔つきからうってかわってきょとんとした表情を見せた。
(あれ?)
と、俺は、拍子抜けした。
「信じるわ」
ラテュレは、さらりと言った。
「絶世の美貌と豊穣なる思慮と深淵なる慈愛の持ち主とされる女神様にあこがれるのは、女性として当然でしょう?」
「いや、けっしてそんな感じじゃないと思うぞ」
俺は、エストを思い出しながら言った。
俺の中では、エストのイメージはどS鬼畜女神で定着しつつあるから、ラテュレの言っているイメージとは似ても似つかない。
エストの女神様としてのこれだけの持ち上げられっぷりは、まさに風評被害の正反対バージョンである。
「意外と、笑顔で人を突き落とすような美少女とかだったりするかもしれないぞ」
実際にあの青空だけの空間からこの異世界の地上まで女神エストに突き落とされている、生き証人である俺は、冗談まじりに言った。
誇張のないありのままの真実だ。
ラテュレは、ふーんと鼻を鳴らした。





