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ラテュレは、羊皮紙の魔方陣に右手をかざした。
羊皮紙が、ぼうっと青白い光を放った。
墨汁がにじんで半紙の上で線になるように、青白い光はゆっくりと多角形の線を作り出していった。
「適当なステータスをみつくろっておくわ。いんちき八百長もしくはでっち上げの虚偽のステータス。どう使うかは、あなたの自由よ」
と、ラテュレは、いたずらっ子のようにほほ笑んだ。
羊皮紙に描かれている大きな円の内側には、青い線の六芒星が浮かび上がっていた。
イフのものよりも小さめな六芒星である。
「これはひどい」
ラテュレは、六芒星をまじまじと見ながら言った。
「何とも無難なものが、できあがったわ。何の特技も特殊技能もなさそうな平々凡々のつまらないステータス」
「……自分でつくったんだろう?」
と、俺が呆れたように聞くと、ラテュレは悪びれずに、
「そうよ? でも、かなりいい加減につくったから」
「……あのな」
「あなたの力は、とんでもないわ。まるで、女神エストの加護でも受けているかのよう」
ラテュレは、何気ない調子で言ってくすりとほほ笑んだ。
俺は、背筋にうすら寒さを覚えた。
なぜこのタイミングで、女神エストの名前が出てきたのだろうか。
ラテュレの幼い碧眼は、俺の何かを見透かしているのだろうか。
俺は、疑心暗鬼の袋小路に足を踏み入れかけていた。





