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矢を折った俺の右手は、がくがくと震えていた。
緊張感と疲労感がタッグをなして急に襲ってきたような衝撃が、身体全体を覆っていた。
(何なんだ……この感じ)
身体が自然に反応したようなもので、少しでもタイミングが遅れていたら、俺は矢の餌食になっていたに違いない。
「へえ……驚いた。想像以上ね。ああ、周りの人には気付かれないように、静かにお話ししましょう」
黒髪のツインテールの少女、大賢者グローシスの一番弟子ラテュレは、芝居がかった調子でこっそりと言った。
「……何のつもりだ?」
俺は、声を低めてラテュレをにらみつけた。
小さな矢の射手は、目の前の少女だと確信していたからである。
「そんなに怖い顔しないで大丈夫よ」
ラテュレは、ほほえみながら、
「あなたが受け止めた矢は、私の魔法"精神の矢"。直接精神を攻撃するものだから、仮に直撃したとしても外傷はないし死にはしないわ。二日ほど昏睡状態になるだけよ」
さらりと怖いことを言うものである。
「……あのな」
くりっとした大きい綺麗な瞳で、ラテュレは俺をまじまじと見た。
「あなた、何者なの?」
と、ラテュレは、凍りつくような声で聞いた。
ラテュレの表情からは、さきほどまでの人を食ったような調子は、消え失せていた。
「ジジイがつくった"六芒星測定"は、簡単にエラーなんか出さないわ」
ラテュレは、自信たっぷりに言いきった。





