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「騒々しいわ」
俺たちの後ろから、静かな凜とした声がした。
声の主は、受付のすぐ近くに酒場が併設されているのだが、受付に一番近い端のカウンターの席に座っている人物だった。
もっと詳しく言うと、黒髪碧眼の少女である。
年は、イフと同じくらいかもしれなかった。
イフとは対照的な、長い黒髪のツインテールと意志の強そうなツリ目が、目を引いた。
「あなたは、A級冒険者の魔法使いラテュレ・メソッド様……?」
マーシャルが、何とも説明チックに、その少女の名を呼んだ。
敬称を付けて呼んだということは、マーシャルより高い立ち位置の人物なのかもしれなかった。
しかし、予備知識がなければ、普通の女の子にしか見えない。
しかも、ウイスキーのような酒をあおっているカウンターの男たちに混じって、少女が飲んでいるのは、オレンジ色のかわいらしいものだ。
カクテル派なのかもしれない。
(いや。問題は、そこじゃないな)
と、俺は、自身にツッコんだ。
そもそもイフと同年代と思われる女の子が、堂々と酒を飲んでいるのは、どういうことだろう。
少女は、くいっとグラスの残りを飲みほすと、カウンターのマスターに向かって、
「おかわりをいただけるかしら? おなじものを。アルコール抜きでね」
「……だよな」
と、俺は、呟いていた。
非常にさまになっている物言いだか、その実体はどうやら単なるジュースの追加オーダーのようだ。





